「冬は釣れない」をデータで検証する
魚釣りに関しては釣り人の経験からくると思われる定説がたくさんあり、「冬には魚が釣れづらい」ということもそのような定説の一つである。しかし魚釣りでは釣果に影響する要素は非常に多く複雑であり、定説として信じられている事柄でも実験により検証された事実であるかは判断が難しい。そこで、この記事ではこの「冬には魚が釣れづらい」という定説をデータで検証したい。
使ったデータ
本牧海釣り施設の釣果情報を用いる。期間は2025年2月から2026年1月までの1年間である。海釣り施設の休業日は除く。
「冬は釣れない」という言説は、「冬には水温が低くなるため魚の代謝が落ち、エサを追わなくなる」と説明される。そのため、この記事では水温と釣果数の関係を調べる。
釣果数の指標としては、施設全体での総釣果数ではなく、来場者一人あたりの釣果数を用いる。総釣果数は来場者数の影響を大きく受けるし、釣り人として興味があるのは自分が何匹釣れるかだからである。
水温と釣果
次の図は、日ごとの水温と一人当たり釣果数の推移である。水温が高いと釣れ低いと釣れないとは必ずしも言えないことがわかる。たとえば、5月はまだ水温が上がりきっていないにもかかわらず釣れているが、7月下旬から8月上旬は水温が高いにもかかわらず釣れていない。

次の図は、日ごとの水温と釣果数の散布図および箱ひげ図である。相関係数は0.18と小さく、水温だけで釣果を説明するのは難しいことがわかる。ただし、回帰直線の傾きが0であるか仮設検定するとp=0.0006で帰無仮説が棄却されるので、水温が高いほど釣れやすいという傾向は微弱ながらもありそうである。箱ひげ図でも水温が低いときは釣果の中央値が低い。


魚種別
次に、魚種別の釣果数を調べよう。本牧海釣り施設ではいろいろな魚が釣れるが、上位4種はイワシ・アジ・コノシロ・シロギスであり、これら4種で全体の釣果数の94.6%を占めている。
日ごとの釣果数を図にすると、以下のようになる。釣れる魚には季節性があることがわかる。たとえばイワシは春から夏(ただし7月下旬から8月中旬を除く)にかけて釣れており、コノシロは冬に釣れている。イワシは春には釣れているが秋には釣れていないことから、水温だけでなく季節が重要であることがわかる。

次の散布図からも、イワシは水温が高めのときに、コノシロは水温が低いときに、それぞれよく釣れていることがわかる。

ただし、冬にはコノシロの釣果が伸びるという結果は、データ収集方法からくる誤りを含む可能性があることに注意が必要である。本牧海釣り施設の釣果情報は来場者への聞き取り調査であるため、回答者によってはリリースした魚を含んでいない可能性がある。コノシロは骨と臭みのためリリースされることも多いが、冬に他の魚の釣果が減るとリリースされる割合も減り、釣果として数えられる割合が増えると思われる。すなわち、冬のコノシロの釣果数の伸びは、釣り上げられた数が単純に伸びたというだけでなく、アジなどの釣果が減ったことでコノシロの価値が相対的に上がったことによって持ち帰られる数が増えたという事情を反映している可能性がある。
まとめ
この記事では、「冬は魚が釣れない」という定説を、データから検証した。検証した結果、たしかに水温が低いと釣れづらいという傾向がわずかにあるが、それよりも魚種と季節の影響が大きいということがわかった。